サルコペニア・フレイル指導士の活動最前線
指導士インタビュー 【第一回】
川崎医療福祉大学 リハビリテーション学部 助教、理学療法士
佐藤宏樹(さとう・ひろき)先生
広島県福山市出身。理学療法士。川崎医科大学附属病院リハビリテーションセンター非常勤兼、川崎医療福祉大学リハビリテーション学部で助教として教鞭を執る。サルコペニア・フレイル指導士として、サルコペニア・フレイルの認知や啓発にも精力的に取り組んでいる。
患者対応の質を向上させるために、自分の持つ知見を惜しみなく生かす
専門職種(理学療法士)として行っている活動
患者診療において、入院時にフレイルについてのアンケートを実施しています。YESかNOで回答する簡易チェックリスト形式で、患者さまができることとできないことを把握でき、運動や生活指導をする上でとても役に立っています。
認知機能が衰え回答が困難な患者さまの場合は、特定できる客観的な数値を元に判断するため、特に評価者の個人スキルが求められます。
また病院データベース内の評価項目にサルコペニア・フレイルがほぼ入っており、患者診療時に活用できるよう他の療法士と内容を共有しています。患者さまの身体機能において、入院中に合併症に繋がるおそれがないか等、サルコペニア・フレイルの観点からリスクを想定しています。
指導士として行っている活動
病院では主に他職種の教育や指導に携わっています。
まず現在のサルコペニア・フレイルについての認識や理解度を調査するために、医師、看護師、栄養士、薬剤師、理学療法士等、全職種600名程度を対象にアンケートを実施しました。
病棟間や職種間で認知度や活用法におけるギャップはまだありますが、診療下の先生に評価方法を提示し、最終的には患者さまご自身で、できるだけその評価とフィードバックを生かしていただくことを目指しています。
また看護師の教育課程にサルコペニア・フレイルに関する講義内容を組み込み、アンケート結果を元に「こんなことを知ってほしい」という点を動画にして紹介しています。
施設外で行っている活動
地域の理学療法士や保健師とコラボし、65歳以上の高齢者向けの講演や評価を行っています。
フレイルについての説明から始め、各専門職種から認知や嚥下といった機能の説明等を全体で行った後、小ブースで個々への評価とフィードバックの時間を設けています。それを元に患者さまにはご自宅で実践いただき、約2カ月後に再評価もしています。
患者への評価や結果の伝え方、アプローチ方法
ひとえに高齢者といっても悩みはそれぞれで、運動習慣等により機能に個人差があります。不安を抱えている方への細やかなケアを実践するため、いかにわかりやすくフィードバックするかが大切です。
アプローチとしては、小規模な会場で個別ブースを設け、患者さまと密にコミュニケーションを取れるようにすることでしょうか。普段から評価に携わる複数職種のスタッフが同行し、患者対応の質の向上を目指します。
他職種のスタッフへの評価や結果の伝え方、アプローチ方法
評価が簡単であるがゆえに、患者さまへの伝え方に困っている若手スタッフが多いように感じます。そこで、評価項目の一つひとつにおすすめのフィードバック方法を設けた、細かな資料を作成し活用しています。
ただ評価だけを伝えるのではなく、問題点がどこにあり、何に気を付けていくべきか、そしてどのようにフィードバックをし目標設定するかが非常に重要であるため、その方法の部分から指導しています。
サルコペニア・フレイルを理解することの重要性を広め、活用機会を増やしたい
思いと今後の抱負
教育現場においては、卒前教育のレベルを高めることが重要だと考えています。サルコペニア・フレイルについて、学生たちに正しく、どれだけわかりやすく伝えていけるかが課題です。
医療現場の医師や看護師には、特に急性期におけるサルコペニア・フレイルの認識の重要性を啓発していきたいです。転倒予防等の医療安全の面にも組み込んでいけたらいいなと思っています。
そしてもちろん、一般の方向けの啓発活動や交流ももっと増やしたいです。
評価からフィードバックまで、一貫して適切に行える指導士が必要
指導士を目指す方へのメッセージ
サルコペニア・フレイルという用語の認知は少しずつ広まりつつありますが、実際に現場で診療にどのように生かすべきか困っているスタッフがまだたくさんいます。そのために、指導士が主体となって伝え行動することがとても大切です。
患者さまとコミュニケーションを取りながら、よく考え、適切なフィードバックまで総合的にできる指導士が増えると嬉しいです。
また指導士というのは、サルコペニア・フレイルの認知を広げる一つのツールのような役割も果たしてくれていると感じています。より多くの方に興味を示していただけるきっかけになれたら嬉しいです。